デジタルマーケティング支援サービスサイトへ
LINE 友だち追加
祈りアイコン
デザインアイコン
特産品外アイコン

仏教の教えをこめた商品のつくりかた

祈りバナー
デザインバナー
特産品バナー

内村 彰

内村 彰

フェリシモは通信販売会社として女性を中心に広く親しまれている会社です。そこに、奈良や京都をはじめとしたお寺に関連する商品を専門に制作する「おてらぶ」という「部活」があることをご存じでしょうか。

「お寺、ラブ」で「おてらぶ」。今回のSuccess Storyでは、このフェリシモの「部活」を立ち上げた「ひさよし部長」こと内村 彰(うちむら あきら)さんに、神戸の海が煌めくベイエリアのオフィスでお話をうかがいました。

(上記商品写真は「しゃかしゃか光かがやく 初転法輪スノードーム」・「しゃかしゃか星が舞い散る 涅槃スノードーム」。販売は終了しています。以下、記事中の商品写真はフェリシモHPより転載およびご提供いただいた写真を使用しています。)

CONTENTS

「今の自分でいい」ことを学ぶための「写仏」レッスン

──

まず「おてらぶ」を立ち上げられたきっかけから聴かせていただけますか。

フェシリモに入社する前に8年ぐらいグラフィックデザイナーをやっていたのですが、友人からの紹介もあってフェリシモに中途入社しました。最初は外部のデザイナーさんと一緒にカタログを作る仕事をしていたのですが、自社商品を見るうちに、自分でも商品をつくりたくなりました。それで、社内異動を希望し、「レッスン商品」を企画する部署に異動しました。

異動してはじめは商品開発の知識や経験もないので、かなり苦戦していました。何が売れるのかもわからず結構辛くなってしまったときに、たまたま奈良の當麻寺(たいまでら)で、仏さまを筆で描く「写仏」をやっていることを知ったんです。

奈良 當麻寺 東大門

当時の私は「写仏」をやったことがありませんでしたので、ぜひ体験したいと思い、お寺に行って実際にやってみたところ、気持ちがすっきりしたのを憶えています。そのとき気づいたのは、レッスン商品をつくることに悩んでいましたが、なにかのスキルアップを目的にしなくてもいいんじゃないか、ということでした。「今の自分でいい」ということを学ぶためのレッスン商品はどうだろうと思い、お家にいながら写仏体験ができる『プチ写仏プログラム』を開発することができました。

毎月届く、仏さまの絵をなぞり描きながら、セットされるレッスンテキストに掲載されている僧侶の方の「おせっぽう」を読み、心静かな時間を過ごす、そんなレッスン商品だったのですが、当時話題になったこともあり、多くのお客さまへお届けすることができました。この商品を通して、「今の自分を認めることの大切さと、そのために自分と向き合うトレーニングが必要」ということを伝えたかったのです。

『プチ写仏プログラム』の開発を通じて、いろいろな僧侶の方と知り合いになりました。そこで仏教の宗派それぞれが大切にしていることも知ることができ、それぞれのアプローチ方法が禅的であったり、修行的だったり、こういった仏教の多様な教えを伝えていけるような活動がしたいと考え、2014年にフェリシモ「おてらぶ」を立ち上げました。

──

宗派が違うお寺に次々と連絡をして、商品開発を進めていくのは大変だったのではないしょうか。

もちろん、私一人でそのような交渉ができるわけありませんので、インターネット上での仏教ポータルサイトの先駆けとなった「彼岸寺」の松本紹圭さんのご紹介で、後にフェリシモとさまざまなコラボプロジェクトをすることになる認定NPO法人の「おてらおやつクラブ」の松島靖朗さんを通じて、関西の僧侶の方々と商品開発を進めていきました。

お寺さまとのお付き合いの中で仏教を深く知り、勘違いしていたことにも気づけたのは大きかったです。「宗教というものは少し怖い」と思っていたところもありましたが、改めて私が知った仏教は、一方的に「信じなさい」と説くのではなく、「こういう考え方って、どうだろう」と投げかけてくる感じでした。仏教に接するにも自分で考え、他者とのご縁について考えつづけることが大切だとわかってから、さらに仏教が好きになりました。

また、仏さまにもいろいろな個性があることを知り、仏教美術の美しさにも気づくことができたので、お寺・仏教文化も伝えていきたいと思うようになりました。

多種多様な「おてらぶ」商品

──

「おてらぶ」の商品を見ていると、非常に多彩なことに驚きます。

「おてらぶ」の商品は、ジャンルを大きく分けると、博物館での企画展などのために作ったものと、フェリシモのお客さま向けに作ったものがあります。

企画展にいらっしゃる方は、そこでしか買うことができない限定グッズが欲しかったり、より「尖った」商品を求めているのではないでしょうか。例えばこの「千手アームクッション」は、大阪の葛井寺さまの「千手観音菩薩像」が展示された「仁和寺展」開催に合わせてつくったものです。

──

これはすごいインパクトですね。

企画展グッズならではだと思います。このような商品をつくるときも、インパクトを求めるだけではなく、必ず詳しい解説カードを同封するようにしています。解説文を記載する際はお寺の方と表現について相談しながらつくっていきます。この商品のモチーフとなった葛井寺の「千手観音菩薩像」は8世紀につくられた日本最古の千手観音像ですが、この仏像が「1300年の時を超えて現代を生きる衆生の疲れを癒す」というのをコンセプトにしています。この商品はお寺関係者の方にも売れたとのことです。

一方、「おてらぶ」の購買層である30~50代女性によく売れているのはアクセサリー系で、仏教美術をモチーフにしていたり、仏さまを概念化したデザインで展開しています。このリングは、東京国立博物館で開催されていた特別展「空也上人と六波羅蜜寺」のコラボグッズとして制作したものですが、現在もフェリシモのショップで取り扱っています。

この商品でお伝えしたかったのは「なぜ空也上人の口から6体の仏さまが出ているか」ということです。空也上人は「『南無阿弥陀仏』と念仏を唱えることで救われる」と説きながら全国を巡っていました。そこでリングを着けて手を合わせると、自然に合掌したくなるようなグッズを作りたかったんです。六波羅蜜寺へデザインのプレゼンテーションに伺ったとき、とても喜んでいただけたのを覚えています。

企画展ではなくて、お寺とのコラボレーションでつくることも結構あります。こちらは京都の高台寺の鬼瓦をモチーフにしたマスコットクリーナーです。豊臣秀吉の正室「ねね」さんのお寺だけあって鬼瓦もなんか可愛らしい顔をしてるんですね。またお庭がとにかく美しくて四季それぞれに風情があるのを、四季をイメージしたデザインで表現しています。「高台寺の四季を愛でに訪ねてほしい」という想いでつくっています。

「おてらぶ」がお寺とコラボレーションするときには、お寺が「伝えたい」と思っていらっしゃることをヒアリングして、その想いを「おてらぶ」として翻訳し、商品として提案するようにしています。いつも「このお寺だから表現できる商品ってなんだろう」と考えるようにしています。ですので、お寺の方から「うちのお寺はこんなところがよくて、こんなものがあって...」と熱く語っていただけると、よい商品が生まれます。

──

「おてらぶ」の商品には、仏像の頭部を模したキャップや梵鐘(お寺のつりがね)など、モチーフの特徴をそのまま使っている商品がいくつかありますが、これは意図的にそのままにしているのでしょうか。

そのような商品の場合、お寺に関するものの中でも、みなさん一度は見たことはあるけれど、深くは知らない人が多いだろうものを選ぶことが多いです。例えば、このロールペーパーホルダーは梵鐘のデザインですが、梵鐘をじっくり近くまで見ることってなかなかないですよね。でも、もしこれが会社の隣の人の机の上においてあったら「なにこれ」って手にとるかもしれないし、「除夜の鐘で108回、鐘を鳴らす意味ってなんだっけ」という話になるかもしれない。そんなアイテムの面白さから仏教の話にちょっと聞く耳が立つというか、そういう瞬間をたくさんつくりたいと思っていて、なるべくわかりやすくそのまま立体化するようにしています。

京都の仁和寺(にんなじ)の商品開発(下記の画像上部)では、お寺で見ることができる、すてきな5つの風景を、五色のマスキングテープにしました。

仏教で、たびたび登場する「邪鬼」をモチーフにしたポーチ(下記の画像下部)は、2017年の「運慶展」でのコラボレーショングッズ。「仏教では悪しき者も、説きふせ、改心させた上で仲間にして、仏法を守るための役割を与えられる」という世界観を伝えるために作りました。

──

こういったアイディアが次々出てくるのは素晴らしいですね。一方、それが仏教の教えを正しく伝えるものであっても、それをターゲットの方々に買ってもらわないといけないというところが「おてらぶ」としてのビジネスだと思います。どのように商品化のプロセスを進めているのでしょうか。

先ほど話したように、企画展などの時には、クライアントにあたる主催者さまも特別なものを求められることが多いです。「おてらぶさんだったら、もっといけますよね」とご期待いただくので、全力で「尖った」ものを作ります。

一方で、フェリシモのお客さま向けでしたら、毎月お届けして楽しんでいただく商品を作らないといけません。

こちらは大阪の四天王寺さまとのコラボレーション商品で「冠位十二香」といいます。四天王寺さまは聖徳太子が建立した記録が残っているお寺ですので、聖徳太子が定めた「冠位十二階」をモチーフにした12種類の香りを楽しむことができるお香を開発しました。パッケージは聖徳太子が手に持っている細長い「笏(しゃく)」をイメージ。そこに印刷された「冠位十二香」の文字は聖徳太子直筆の書から1文字ずついただいて組み合わせていて、お香の色も冠位の色を再現しています。このように、お客さまの日常の生活に合うような商品開発も続けています。

100円からの社会貢献 「みんなでおそなえギフト」

──

最後に「おてらぶ」の社会貢献活動についておうかがいします。
「おてらぶ」では「みんなでおそなえギフト」という1口100円で参加できる支援ギフトボックスの共同購入の仕組みを進めていらっしゃるようですが、どのような経緯で始められたのでしょうか。

経緯のお話しの前に「おてらおやつクラブ」についてお話しさせてください。
「おてらおやつクラブ」は、さまざまな理由で暮らしに困難を抱えるひとり親家庭に向けて、お寺の「おそなえ」の食品類を各家庭に「おすそわけ」する認定NPO法人です。

代表である松島靖朗さんは、2013年に大阪で親子が餓死したニュースを見て、「この現代の日本で餓死でなくなる人がいるとは」と衝撃を受けられたそうです。
一方、実家のお寺には、毎日おそなえものとしてお菓子や果物が集まってくる。もらったものだからいただかないといけないわけですが、家族経由で取り分けることぐらいしかできない。
このアンマッチを社会としてなんとかしないといけないと「おてらおやつクラブ」を立ち上げられました。

「おてらおやつクラブ」の活動は年々広まっているのですが、「ボランティアで、持ち出しでやっていて継続が難しい」と聞いていました。フェリシモは、ダイレクトマーケティングの会社という特性上、物流配送に強いこと、また継続してお客さまとつながっている仕組みを持っていることから、何か解決できる方法があるのではと考えました。

フェリシモは、さまざまな社会貢献活動につながる「基金・寄付」を行っていますが、今回の「みんなでおそなえギフト」は、「困りごとを抱えるひとり親家庭への支援」という主旨に賛同されたお客さま「みんな」で、お寺に「おそなえ」する「ギフト」を共同購入する、というかたちをとっています。「おてらぶ」の通販ページで1口100円から共同購入の資金を募って、80口分集まると、約8,000円相当分のお米2kg・レトルト食品・お菓子等を「おてらぶ」がみなさまに代わって準備し、スタッフが書いた手紙と一緒にギフトボックスに詰め合わせます。

ギフトボックスは、各家庭へ配送する前に「おてらぶ」、「おてらおやつクラブ」とご縁があるお寺に一度「おそなえ」して読経していただくのがポイントです。「一度仏さまにおそなえする」という行為は、「目に見えない大切なつながり」となり、お客さまやひとり親家庭のみなさま、「おてらぶ」と仏さまが「ご縁でつながっている」ということを明らかにする大切なプロセスだと考えています。

「おそなえ」されたギフトボックスは、フェリシモの物流システムにより「おてらおやつクラブ」が支援するひとり親家庭に配送されます。このとき、匿名配送の仕組みでシステムに個人情報を残さないことで家庭側のプライバシーを確保しています。

おかげで今では、1月に80箱程度をお届けすることができています。フェリシモのお客さまには社会的な問題に興味をお持ちの方が多いので、とても親和性の高い取り組みだと思っています。これからも「おてらぶ」は、積極的に「おてらおやつクラブ」や関わっていただけるお寺、そしてお客さまとの「ご縁をつなげていきたい」と考えています。

──

これからの「おてらぶ」の活動を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

内村 彰

内村 彰(うちむら あきら)

株式会社フェリシモ クラスター本部 生活雑貨事業部 ブランド推進4課 ミュージアム部G
ミュージアム部・おてらぶ 部長

大阪市堺市生まれ。大阪芸術大学デザイン学科卒。大阪のデザイン会社を経て、株式会社フェリシモへ入社。フェリシモ「おてらぶ」の部長として社内外のお寺好きメンバーと共に、お寺文化から心豊かな暮らしを実現する企画提案を続ける。お寺とのコラボレーションも日々意欲的に行っている。

LINE公式アカウント

お気軽にLINEの友だちに追加ください。
ただいま友だち追加の限定特典として「ナララボ編集長のここだけで聴ける音声配信」をお届けしています。

LINE 友だち追加

^