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観光DXについて考える

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ナララボ編集部

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観光地としての付加価値をあげるための取り組みのひとつとして、近年では「観光DX」という言葉がよく聞かれます。観光庁も2021年度から、デジタル技術を活用した地域観光モデルの公募を始め、「note」で公式アカウントの「観光DX推進プロジェクト」の名の下に多彩な事例を紹介しています。

こういった全国の事例を取り上げながら、奈良県への観光客誘致につながり、「関係人口」も増加させ、地域創生の一環にも寄与する「観光DX」とはどのようなものか、考察を進めていきます。

CONTENTS

観光DXとは

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まずはDXという言葉の意味から、あらためて確認していきましょう。

DXとはDigital Transformationの略語です。頭文字をとるとDTですが、英語圏ではTrans(~を横断する)を、同義語のCrossを略す際に使われる”X”と書く慣習があるため、DXという略称が普及しています。

Transformationとは変形、変容という意味です。よってDXを直訳すれば、「デジタル化による変容」となります。とすれば、観光DXによって観光関連事業の姿が、地域を訪れる人々にとって、また観光関連事業者自身にとって、どう変容していくのがのぞましいのでしょうか。

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DXしたらもう戻れない

DXという言葉が「変形、変容」をあらわすものであるならば、「観光DX」の本質とは、観光に関して、デジタル技術により創出されたある状態について、「その状態になる前には、もう戻りたくない」、あるいは「戻れない」状況にあるのだと考えます。

例えば、現在、一般にはスマホなしに旅行するのはかなり不便でしょう。スマホがなかった時代、といっても初代iPhoneの発売が2007年ですので、ほんの十数年前まで、旅行しようとする人たちは紙のガイドブックやテレビの旅番組によって情報を得るしかありませんでした。
今では、目的の観光地に移動する際にはスマホ上で地図を確認し、飲食店等もスマホから予約する場合が増えました。日常生活で買い物に出かけた場合にスマホを忘れてもなんとかなりますが、旅行に出たときにスマホを家に置いたままだったことに気づいた場合は、多少時間がかかっても取りに戻る人が多いのではないでしょうか。

スマホというツールに集約されるデジタル技術は、「スマホがない状態には戻りたくない、戻れない」という意味で、観光DXを考える上で不可欠の要素といえます。

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なくなったら困る観光DXサービスは

DXを「それがなかった状態には戻りたくない、戻れない」ものと考えた場合に、観光地が提供できるDXサービスとはどのようなものでしょうか。
実は旅行する際に、利用者が便利だと感じて、もうそれなしには旅行したくないと考えるサービスは、既にGoogleといった大手のIT企業によって提供されています。地図アプリや飲食・宿泊の予約サイトなどは機能が充実していて、日々改善されています。観光事業者から見ても、これらのサイトへの情報提供だけで手一杯という状況もあるでしょう。さらにここで観光事業者独自に、あるいは自治体独自に観光DXを立ち上げていく必要はあるのでしょうか。
それを判断する際のキーワードはやはり「それがなかった状態には戻りたくない」、「なくなったら困る」サービスだと考えます。

福井県「三方五湖」での「観光施設駐車場の混雑情報配信」

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福井県の観光DXの取り組みについて

前述の通り、観光庁が近年観光DXプロジェクトを立ち上げています。関連して、2021年度と2022年度の観光庁が採択した地域観光モデル事業の内容を調べていたところ、福井県の興味深い事例が見つかりました。

福井県は、独自の観光データ分析システムを活用した観光事業者の収益向上の取り組みが、2022年の観光庁が公募した「DXの推進による観光・地域経済活性化実証事業」にも選ばれています。

また、福井県は、その他にもさまざまな地域発の先進的なDXの取り組みを行っています。
今回ご紹介するのは観光庁の採択を受けている事業ではなく、福井県嶺南(れいなん)振興局が独自に実施している事業です。2022年9月から10月に県内人気の観光地「三方五湖」で実施された「観光施設駐車場の混雑情報配信」です。地域独自の観光DXの取り組みとして「なるほど便利」と思わせるものです。

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スマホから駐車場混雑情報に即アクセス

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出典:福井県公式ウェブサイト

「三方五湖」周辺の博物館や道の駅などの、駐車場10数ヶ所の混雑状況を、ネットやデジタルサイネージで配信。配布されたチラシ(上記画像はその一部)の2次元バーコードからも、スマホで読み取ることでもアクセス可能としました。また、一部の駐車場については、スマホから予約できるようにしました。

出典:福井県公式ウェブサイト

さらに、「パークアンドライド」の仕組みを導入し、マイカー利用者が、乗換用駐車場から観光周遊バスを利用できるような導線もつくっています。

スマホでアクセスできるシンプルなサービスですが、一度、この取り組みを知った観光客であれば、次に三方五湖を訪れる際には、必ずスマホで該当サイトをチェックするのではないでしょうか。
そのサイトで駐車場を予約する場合もあるかもしれませんし、さらに駐車場の時間を予約したなら、そのままスマホを立ち上げたまま、別のサイトで、近くのランチの場所を探して予約するかもしれません。
人気の観光地を訪れて、駐車場を探してウロウロすることもなく、スムーズに観光できたら、その経験からまたこの地を訪れようと考えたり、友人にその経験を伝えて「スマホがあれば絶対便利」な観光地としておすすめしたりすることも考えられます。
つまり一度サービスを体験することで、その後の行動が変容するわけです。

「駐車場案内のデジタル化」という限定されたひとつのサービスであっても、そのサービスがなかった時代には「戻りたくない」「戻れない」状況となり、訪問者の観光に伴うアクションが波及して次々と変化していくのであれば、それは観光DXの成功事例と言えます。このようなサービスを継続できるかは費用対効果の問題もありますし、サービスの成功によって三方五湖を訪れる車の数が急激に増えれば、また別の問題も起こってくるわけですが、そこからさらに改善を考えていくことで、観光地の付加価値がますます向上していくことがのぞめます。

今回は福井県の事例を取りあげて、観光DXの価値を判断する基準は「もう元には戻れない」変化が起きるかどうかだと考えてみました。 引き続き、こういった先進事例を参考にしながら、観光DXについて研究していきます。

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